PL訴訟に勝訴

2002年8月15日

欠陥をすべて認め110万円の損害を命ずる

当クリニックが当事者となったPL訴訟で広島高等裁判所松江支部は、平成14年4月5日、原告勝訴の判決を言い渡しました。以下は、この訴訟で代理人となった弁護士が「PL法・情報公開ニュース」に投稿した記事を転載したものです。ご覧下さい。

第1 はじめに

広島高等裁判所松江支部は、平成13年11月14日、ナースコールシステムの製造物責任訴訟について一審判決を一部変更し、賠償金を金110万円認める判決を言い渡した。
原告の主張を認めながら、損害金は僅かという判決内容で、複雑な思いをする判決であった。
事件は、作動初日の平成6年6月14日に設置されていた被告アイホン、同日本無線製造の新型制御機(26番制御機)の無線系機能が終話しない不具合を起こし、6月20日取り付けられた旧型制御機(72番制御機)の無線系機能も終話しない、あるいは発熱によるシステムダウンという不具合を起こし、7月11日に改めて持参された新型制御機(82番制御機)も同様の不具合を起こし、堪らず他のメーカーの制御機を設置し原告が、当初メーカーであるアイホン、日本無線の製造物責任を問うた事件である。

第2 原判決の構造

原判決は、第1に作動初日の平成6年6月14日に設置されていた26番新型制御機が欠陥であることは認めつつ、第2に、平成6年7月11日に再度持参された82番新型制御機については、原告の拒絶によって被告アイホンが取り付けられず、その後原告によって取り付けられたとし、その上で82番制御機は原告関係者によって「不適切な措置をとられた可能性を払拭できない」としてその制御機の欠陥を認めず、その結果、第3に損害としては26番制御機による損害だけを検討し、損害は無いと判断した。

第3 控訴審判決

原告は、当然現判決の第2、第3の不当性を主張し、関係者の陳述書を複数提出して反論した。
しかし、控訴審判決はこの点については何も触れていない。
その代わりに、控訴審判決は、原判決第1の点につき、終話しないという欠陥の外に、もう一つの争点であった発熱の発生とその欠陥性を認定した。つまり、原告の主張した本件機器の欠陥はすべて認定した。これについては、大きな前進であり原告も大いに満足した。
しかし、控訴審判決の内容によれば、2つの欠陥を認定すれば、それはどの機器にも共通する欠陥であったのだから、平成6年7月11日に再度持参された82番新型制御機を誰が取り付けたかを問わず、本件機器は最後まで欠陥を有していたことになり、その結果、賠償額も原告主張の通り認められるということになるはずであった。
しかし、賠償額については、原告であるクリニックの信用毀損による損害として金100万円、弁護士費用として金10万円を認めるに止まった。

第4 まとめ

控訴人判決は、争点であった欠陥をすべて認めたが、損害額については辛い内容であった。クリニックの損害は、工事のやり直しを含めてそれなりの出費を負担したが、それを損害として認めなかったことには不満が残る。
しかし、被告はこれによって社会的な信用を失った。顧客とのトラブルにおける当初の不適切な対応が問題を大きくしたことについて、反省する点が多々あると思われる。

◇担当弁護士/森田 太三さん(東京)
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